不倫ができる女性

不倫サイトを何年も利用しているひとみは、もはや良い相手を見つけるのも手慣れていました。もちろん、悪い意味ではありません。彼女は相手の気分を損ねるようなことはしませんし、純粋に恋がしたいだけなのです。そして彼女は相手をその気にさせるのも上手かったし、自分を魅力的にみせるのも上手でした。

特に派手さもないですし、過激な誘い文句を言うわけでもありません。しかし、彼女には何か他の人とは違う魅力があるのでした。不倫サイトでは相手の顔写真があったとしても、本当にその相手なのか知る術はありません。もしかすると違う写真かもしれませんし、画像を加工している可能性もあります。ですから、相手の顔や姿は知らない状態で関わっていくことになるのです。

人の印象はほとんど見た目で決まってしまうということが良く言われています。一瞬の見た目で自分が判断されてしまうというのは何だか納得いかない気もするのですが、第一印象というのはそういうものです。しかし、相手の顔や声が分からない状態では何をもとに判断するのでしょうか。

メールであれば文章の雰囲気や記号、絵文字などでしょうか。こういったものは人によって感じ方も違いますし、好みも違います。

けれども、ひとみは不倫サイトで上手に自分らしさを出すことができるのでした。彼女は特別な訓練をしたというわけではありません。その飾らない性格が彼女そのものを表すのに大いに役立っていたのです。

不倫サイトと本当の自分

不倫サイトの中では現実の自分とは全く違う自分でいられる、このことにひとみは嬉しさを感じずにはいられませんでした。不倫を始めてから1年ほどたった今では、さまざまな自分がサイトの中に存在し、それぞれに彼氏がいるという状況ができあがっていました。もちろん、全員が同じ名前ですし、全員が彼女自身なのです。

ですから、どんなテイストの自分でも彼女は自分の内面を出していると感じていました。演じているという気持ちはあまり無く、どちらかというと自然とそうなってしまうような、不思議な感覚です。

これは彼女にしかできないことなのかもしれませんが、とにかくひとみは不倫を始めてから充実感を感じるようになりました。それまでは、たとえ彼氏がいたとしても本当の自分を好きになってくれていないのではないかという不安や、相手に自分の好意を伝えられているのかという疑問ばかりが絶えず彼女を襲っていました。しかし、不倫サイトの中では必ず感情が文字になって見えますし、自分の気持ちも文字にして伝える必要があります。

こういった視覚化が、彼女にはとても相応しい方法だったということです。自分の好意や、愛情をストレートに表すことができる、そして時にはあえて複雑な表現で伝えることもできる、ひとみはそんな魅力的な世界にいつまでも居たいとさえ思うようになりました。そして自分がこんなにも内に秘めたキャラクターを持っていたということに驚いてすらいました。